市川高等学校のちょっといい話
「与える者は与えられる」の法則
今日は、ある営業マンのお話をします。
営業マンのAさんは、かつて新規のお客さんに連絡をとって会いに行くのが苦手でした。
何故か消極的な気持ちが出てきて、行動量も少なかったそうです。
当時は、お客さんに信頼してもらえるだろうか、商品に興味をもってもらえるだろうかと、もらうことばかり考えていたそうです。
「もらうこと」ばかり考えているとどうなるかって話なんですが、
たとえば、信頼してもらえるだろうかなんて思っていても、信頼なんてなかなかしてもらえないじゃないですか。
話だってそんなに簡単には聞いてもらえないでしょう。
商品に興味だって、なかなか持ってもらえないのです。
そうすると、だいたいこうなってきます。
「俺はこんなに頑張っているのにお客さんが俺のことを全然信頼してくれない。話も聞いてくれない。商品に興味をもってくれない。」
「・・・くれない、くれない、くれない。」ってね。こういう人のことを、「くれない族」っていうそうです。
「もらうこと」ばかり考えている人は、みんな周りの人のせいにするようになります。
「くれない族」の人の心ってどうでしょうか。
きっと、いつもイライラしていて、いつもストレスが溜まっていて、これはもう幸せとは言えない状態ですよね。
「もらうこと」ばかり考えていると、最後は不幸になっていくような気がします。
けれども、このAさんは変わったのです。
人間はすごいことに、変わることができるんです。
それまで「くれない族」だったAさん。変わったんです。
ある時から、「自分はお客さんに何を与えることができるんだろう」と考えはじめたそうです。
お客さんに信頼してもらえなかったとしても、お役にたつ情報を提供できないだろうか。
話を聞いてもらえなくても、せめてお役にたつ資料を渡したい。
商品に興味を持ってもらえないときは、どんな形でお客さんを喜ばせることができるだろうか。
これらを考えていくうちに、この営業マンは楽しく仕事ができるようになったそうです。
また、こんなお話もあります。これは、ある専門学校の先生の話です。
信頼してもらうとか、もらわないとかね、そんなことどうだっていい。お客さんに1つ情報を提供できればそれでいい。話なんか聞いてもらえなくても、その時お客さんが喜んでくれたら、それで満足だって・・・・
そう思って働くことができたら、ストレスの溜まりようがないんです。
この話をすると、中には「いや、でも、そんな風に働いていても、営業だったら商品を売らないと給料もらえないじゃないですか。」なんて言う人もいるんですね。
でも、この世の中には「与える者は与えられる」の法則が成り立っていますから、
不思議なことに、「与えよう」「人の役に立とう」という思いで働いている人のところに、色々なものが勝手に集まってくるんですよ。
人との出会いとか、情報とか、・・・結果的にはお金まで集まってきます。
私は、この「与える者は与えられる」の法則は、本当だと信じているんです。
実は私も、数年前までは「もらうこと」ばかり考えていました。
「自分の専門学校を気に入ってもらいたい」「専門学校に入学してもらいたい」
・・・でも今は、進学説明会でも、講演でも、授業でも、目的は一つです。考え方は一つ。
「せっかく高校生と会うんだから、この貴重な時間、その役に立てるような話をしたい。」
・・・そんな思いでお話しています。そうするようになってからは、逆に高校生からたくさんのメールが来るようになったり、講師として講演に呼ばれるようになりました。
私が、「もらうこと」ばかり考えるのをやめただけで、大きな変化があったことに違いありません。
私自身、気持ちの上でもすごく楽になりました。
肩の力を抜いて、自然に話ができるようになりました。
ところで、「与える者は与えられる」という法則は、何かを与えたら、その人からすぐに何かが返ってくるというものではないんです。
与え続ける生き方をしていく中で、回り回って、とんでもない方向から、それも10倍、100倍、・・・それこそ人生を変えるような出来事になって帰ってくるんじゃないかと・・・そう思うんです。
だから、見返りを期待して与えてもうまくはいきません。
すぐに何かが返ってくるわけではないので、見返りを期待してしまうと続かないんです。
でね、「与える」と言うと、みんな大きいことを考えるんですね。
「ボランティアでもしなきゃいけないかな」とかね。
でも、「与える」っていうのは、自分にできる範囲でいいんですよ。
たとえば、朝学校で先生や友人と交わす挨拶。
元気に笑顔で「おはようございます」と挨拶するだけでも、どれだけ周りの人に「与える」ことができるでしょうか。
教室にゴミが落ちていたらそれを拾ってゴミ箱に捨てる。
重そうな荷物を持ってドアを出ようとしている人がいたら、行ってドアを開けてあげる。
そういう生き方をしていく中で、人生はドンドンドンドン変わっていくって、私はそう思っています。
そういうことを続けていくと、「与えることそのもの」を楽しめるようになるんですよ。
周りの人の役に立つことをして、「ありがとう」と言われれば、
「ああ、いいことしたな。」って嬉しくなるじゃないですか。
それだけで、十分ですよね。そんな生き方をしていきたいなと思います。
皆さんいかがですか。「与える者は与えられる」という法則のお話でした。
ここで、自分のできることについて2つのことを心掛けてみてください。
1つはあいさつ。明るく笑顔で、お願いします。家族の人には大きな信頼を与えることになります。
登下校で出会う地域の人にもあいさつをする。それを見ていると、私も嬉しくなります。
2つめは掃除です。ゴミはゴミ箱へ。あたりまえのことですが、君たちがきちんとマナーを守ってくれていると、その姿に感心させられます。
最近、登下校時のゴミが減ってきています。皆さんの協力に感謝します。
「与える者は与えられる」という法則を知って、自分を変えることのできる人は賢い人です。
これは、勉強ができることよりもずっとずっと大切なことです。大きな価値があります。
皆さんが、「与える人に変われる賢い人」であることを、心から願っています。