市川高等学校のちょっといい話
親切なケーキ屋さん
今日は、いい仕事をしたケーキ屋さんのお話をします。
ある日のこと、夕方6時頃に片づけをしていると、一人の男性が慌ててお店に入ってきました。
その日は娘さんの誕生日で、朝、バースデーケーキを頼まれたことをすっかり忘れていたらしく、自宅の玄関を開けようとしてそのことを思い出し、急いでやってきたということでした。
ところがその時、そのケーキ屋さんにはバースデーケーキがなかったのです。
在庫があるかもしれないからと、スタッフの方が本店や支店にも連絡を取りましたが、どこにもバースデーケーキはありませんでした。
がっかりして帰ろうとするそのお父さんをスタッフは引き止めました。
「お役にたてるかもしれませんので、少しお時間をいただけますか?」
そう言うと、電話帳を出してきて他のケーキ屋さんの電話番号を調べ始めました。
そして、いくつか選んで順に電話をかけ始めたのです。
「今、当店にバースデーケーキをお求めになりたいお客様がおられますが、今、在庫切れですので、そちらにバースデーケーキはないでしょうか?」
電話をかけ続け、4件目にやっとバースデーケーキがあるお店を見つけると、お客さんにこう伝えたそうです。
「バースデーケーキがあるそうです。このお店なら、私どものケーキに勝るとも劣らない美味しいケーキを作っているケーキ屋さんです。」
そして、「娘さん、おいくつですか?ろうそく何本ですか?お名前は?」と聞いて、ちゃんとそのケーキ屋さんに伝え、最後に「このお客さんがいらっしゃいますから、よろしくお願いします。」と言って電話を切ったそうです。
そのお父さんは、たいへん喜ばれました。
しかも、そのお父さんがお店を出ようとすると「お客様、少々お待ちください。私も仕事が終わりましたから、一緒に行きましょう。私なら、そのお店の場所もよく知っていますから。」と、急いで片づけを終え、そのケーキ屋さんまで送って行ったという話です。
後日、そのお父さんから会社にお礼の電話があったそうです。
何のために働くのか?
普通だったら、「自分のお店のケーキを美味しく食べてもらうため」と考えますが、このスタッフは違います。
今目の前にいるお客さんの為に自分ができることは何か。このお客さんが喜ぶことはなんだろう。と考えながら仕事をしているのです。
じつは、商品がよく売れるお店には、こういうスタッフが多いんです。
たとえばこのお父さんは、今度ケーキを買う時、どこのお店に行くと思いますか?
紹介されたお店でしょうか?
私は、きっと最初に行ったお店に行くと思います。
更に、「あそこのケーキ屋さんはこんなに親切にしてくれたよ。」とみんなに話し、口コミでもお客さんが集まってくると思います。
このようなことから、心からお客さんを喜ばせたいと思う心が大切だということがわかります。
自分のお店の商品を買ってもらいたいということばかり考えていても、なかなかうまくはいきません。
このスタッフは、商品を買ってもらっているのではなく、「お客さんに喜んでもらいたいという心」を買ってもらっているんです。
さて、皆さんはどうでしょうか。
自分の身近な人に対し、喜ばせたいと思って日々の生活ができていますか?
そう思って毎日を過ごしている人は、必ず社会に貢献でき、幸せな人生を送れると思います。
1日1回でいいですから、心から身近な人を喜ばせることを考えて、取り組んでみてください。
精神的に成長するというのは、自分からそういったことに取り組めることです。
皆さんが精神的に大人になり、言葉や行動が変わることを期待して、今日のお話を終わります。