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市川高等学校のちょっといい話

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掃除の心

 今日は掃除についての話をします。鍵山秀三郎(かぎやま ひでざぶろう)という人が書いた「掃除道」という本があります。 鍵山さんは、イエローハットというカー用品を販売している会社を作った人です。
 現在は、年商800億円以上、全国に400以上もお店を持っています。鍵山さんは、今から約50年前、28歳の時に会社を作りました。 その頃日本は高度成長に差し掛かった頃で、会社はどこも人手不足で、求人を出してもなかなか入社してくれる人がいませんでした。 たまに入社希望者が来たかと思うと、履歴書に書ききれないくらいの転職歴があるような人ばかりだったそうです。 つまり、すぐに会社を辞めるような人しか来てくれなかったのです。そういう人が営業に行っても、なかなか相手にしてもらえないんですね。 そういうことが続くと、営業マンは会社に帰ってきて「もうやってられないよー。誰も相手にしてくれないよー。」と不満をもらし、会社の中が荒れた雰囲気だったそうです。 そこで鍵山さんは、「私はこの社員の心を何とか癒してあげたい。穏やかにしてあげたい。 そしてきちんと利益を上げられる会社にしたい」と、心に強く思うようになりました。
 皆さんが鍵山さんの立場だったらどう思いますか。普通は社員を責めてしまうと思います。 例えば、「自分の会社にもっと優秀な社員が集まってくれればもっと売り上げが上がるのに、こんなやる気のない社員しか来ないなんて。」などと思ってしまうでしょう。 鍵山さんは違うんですね。「その荒れた心を穏やかにしてあげたい」と思う所が、すごいんですね。
 鍵山さんは、さらにこのように続けます。「私は、言葉で説明したり文章で伝える能力は無かったので、掃除を始めるようになりました。 出社してくる社員が汚れやごみを目にしなくてもいいように職場環境をきれいにしておきたかったのです。きれいにしておけば社員の心も穏やかになると考えました。つまりきれいに掃除しておくことが唯一、私が社員にしてあげられる感謝の気持ちだと信じていました。」 このように鍵山さんが掃除を始めた理由は、「社員の心を穏やかにしたい。社員に感謝の気持ちを伝えたい。」という思いからでした。 それからというもの鍵山さんは、毎日会社を徹底的に掃除します。それも会社の中だけでなく会社のまわりも、数百メートル先まできれいにしたそうです。 掃除を始めて20年が過ぎると、社員も自ら一生懸命掃除をするようになり、会社の評価がどんどん高くなりました。 この話と関係があるのですが、私が4年前に本校の新館のトイレ掃除を指導していた時、掃除当番ではないのに自分から素足で腕をまくって、さらに這いつくばって30分くらいかけて一生懸命掃除してくれる生徒がいたんですね。 最初は不思議に思っていたのですが、私は鍵山さんの掃除道という本を読んでいましたから、「君は、その本を読んで実行に移したんか。」と尋ねると「そうです。あの本を読んで感動しました。」という答えが返ってきました。 私は、「あぁ、こんな生徒もいるんだなー。」と感心しました。それ以降私は、その生徒を気にかけて見ていました。 彼はテニス部だったんですが、最初は競技で目立つような選手ではなかったようです。しかし、一年後にびっくりするくらい力が伸びて、インターハイに出場しました。 また、就職も有名な企業に一発で合格し、現在も仕事が楽しくてしょうがないという充実した生活を送っているそうです。 充実した高校生活を送り、幸せな人生を歩むには、時には自分から一生懸命になって掃除に取り組むことも大切です。 人は、いつも見ているものに心が似てきます。ですから、身の回りをきれいにしようと心がけている人は、こころもきれいになっていきます。 つまり、トイレや教室、廊下、階段を磨くことは、自分の心を磨くことにつながります。一生懸命に掃除すると、今まで気づかなかったような汚れにまで気づくようになります。 色々なことに気がつけるようになってくるのです。細かいところまで気がつくということは、仕事の上でも本当に大切なことです。 気がつくレベルが上がってくると、自分だけではなく周りの人も幸せにすることができます。皆さんには、掃除をする心の大切さを理解した上で、清掃活動に取り組んでほしいと思います。 また、ゴミをひとつ拾えば自分のこころがひとつきれいになると思ってゴミを拾える人になって欲しいと思います。

※引用    「私が一番受けたいココロの授業」(ごま書房新社) 比田井和孝著

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